書評
日経新聞読書欄/モンゴル人の民族自決と「対日協力」

日経新聞読書欄/モンゴル人の民族自決と「対日協力」

中国で「10年の動乱」と呼ばれるプロレタリア文化大革命(文革)が始まってから今年は50年になる。終わってからでも40年だ。けれど、いまも文革の全容はあきらかにされたとはいいがたい。文革のなかで共産党政権が内モンゴルのモンゴル人に対するジェノサイドをおこなっていた事実を、筆者はさまざまな史料をほりおこして暴いてきた。本書では文革より前の時代から説きおこし、ジェノサイドの背景に何があったのか… [全文を読む]
書評/モンゴル人の民族自決と「対日協力」

書評/モンゴル人の民族自決と「対日協力」

楊海英氏は気鋭の文化人類学者。南モンゴル出身で日本名は大野旭。「日本名は筆名ですか?」と質問したことがあるが、モンゴルの本名はオーノス・チェクトゆえ、音感から日本字を充てた由。現在は静岡大学人文学部教授。しかし静岡に留まらず日本全国を行脚して、南モンゴルの悲劇、中国共産党の残忍な支配を語り継ぐ。日本の進歩的ブンカジンや左翼の反応は「中国を批判するのは右翼を利する」とか「まさか中国が… [全文を読む]
書評/チベットの秘密──照らし出される中国とチベットの「闇」

書評/チベットの秘密──照らし出される中国とチベットの「闇」

「チベット問題」──。1949年、中華人民共和国が建国後まもなく、独立国家だったチベットを「わが領土だ」と主張し、強引に中国の一部に編入させ、「民主改革」の名のもとに軍事侵攻を開始したことを発端とする各種の問題だ。中国の統治・支配によって、ガンデンポタン(チベット亡命政府)や西側諸国政府の調査によれば120万人ものチベット族が虐殺され… [全文を読む]
書評『中国国民性の歴史的変遷』

書評『中国国民性の歴史的変遷』

国民性論とか民族性論というのはしばしば大きな話題となる。戦後の日本でもルイス・べネディクトの『菊と刀』、イザヤ・ベンダサン(山本七平)の『日本人とユダヤ人』、中根千枝の『タテ社会の人間関係』などが注目を集めた。だが近代中国における国民性論ほど、議論のタネとしてではなく、真剣かつ深刻な議論、場合によっては政治問題とさえなってきたものはないだろう。19世紀半ば以降の中華世界の凋落… [全文を読む]
書評「内モンゴルから見た中国現代史」

書評「内モンゴルから見た中国現代史」

本書は、中国共産党政府による内モンゴル(本書ではこの記述で統一されているので、筆者もそれに倣う)弾圧支配についての、中国側資料に基づく告発の書だ。そして本書の特徴は、何よりも、中国側の内部文書を大量に引用紹介し、彼らの資料から弾圧の方針や実態を引き出したこと、また、共産党が政権を奪取する直前から文化大革命にいたるまで、系列を追って弾圧政策の進行を論じている点である… [全文を読む]
立花隆氏による書評『中国妖怪・鬼神図譜』

立花隆氏による書評『中国妖怪・鬼神図譜』

相田洋『中国妖怪・鬼神図譜』は、驚くほど情報量が多い本だ。これは清朝末期に上海で発行されていた絵入りの旬刊紙『点石斎画報』を、一九八三年に広東人民出版社が復刻したもの。清朝末期の中国庶民たちが信じていた、あらゆる俗習、信仰、妖怪の類が絵入り解説書としてギッシリ詰め込まれている。内容的にはバカげたものが多いが、これが中国人のマインドの中に今もある信仰世界なのだと思ってみていくと、中国民衆レベルの… [全文を読む]
『人間の条件1942』書評/三浦小太郎

『人間の条件1942』書評/三浦小太郎

本書は、一九九三年に出版された中国の作家劉雲のルポルタージュ文学「人間の条件1942」と、同作品を二〇一二年に映画化した際のシナリオで構成されている。小説は、一九四二年河南地方で起きた三〇〇万人の餓死と、同数に及ぶ飢餓難民の発生を、当時を知る人々を取材していく過程が書かれている。その中で最も印象に残るのは「飢え死にかい?そんな年はたくさんありすぎるんでね。いったいどの年のことをいっている… [全文を読む]
書評/アキとカズ──昭和日本の「闇に葬られた過去」

書評/アキとカズ──昭和日本の「闇に葬られた過去」

この物語の始まりは、第二次世界大戦終結、そして朝鮮戦争が勃発した1945年から、2000年。敢えての「戦後」である。樺太残留邦人問題を皮切りに、日本国内での貧困問題と在日朝鮮人差別、北朝鮮帰国事業で北へ渡った日本人妻たちの強制労働問題、そして日本人拉致問題と、普段はあまり大々的に語られることもなく、若年層は知らない人も多いであろう「戦後70年間の暗部」を、新聞記者らしい緻密な取材に基づき… [全文を読む]
書評/紫の花伝書──花だいこんを伝えた人々

書評/紫の花伝書──花だいこんを伝えた人々

本書の主人公は、先日読ませていただいた『アキとカズ 遥かなる祖国』(喜多由浩著)同様、まるで推理小説のように複数存在する。たまたまなのか? 最近の書籍の傾向? 流行なのか? 近年の読み物は安直で短絡的なものが好まれていると思っていたのだが、意外にも書籍の世界では逆の傾向が見られるのであろうか。ある意味有り得ると思うのは、じっくり「本を読もう」という人種は、元から安直で短絡的な風潮に流されて… [全文を読む]
書評/アキとカズ──遥かなる祖国

書評/アキとカズ──遥かなる祖国

本書は、二〇一四年四月から二〇一五年三月まで、産經新聞に連載された小説を加筆修正したもので、作者は昭和三十五(一九六〇)年大阪出身、現産經新聞文化部編集委員の喜多由浩氏である。喜多氏は、韓国延世大学留学経験も含めた豊富な取材を基に、東京大空襲、終戦前後ソ連軍が侵攻した北方領土・樺太の悲劇、シベリアとフィリピンの抑留の悲劇、戦犯裁判の悲劇、戦争末期の日本軍および軍属の狂気、戦後十五年近く経って… [全文を読む]
中国人留学生のための法学・政治学論文の書き方

中国人留学生のための法学・政治学論文の書き方

論文の書き方について、初歩の手ほどきをまとめた本を九州大学大学院の西英昭准教授(41)が出版した。「中国人留学生のための法学・政治学論文の書き方」(中国書店)。日本語の法律用語に慣れない中国人留学生のために書いたが、日本人の学生にも「分かりやすい」と好評だ。日本でキャリアを積もうと、同大大学院法学府へ進学する中国人留学生は少しづつ増えている。2005年は9人だったのが、08年には21人になった… [全文を読む]
『中国の反外国主義とナショナリズム』佐藤公彦著

『中国の反外国主義とナショナリズム』佐藤公彦著

「中国もの」が毎月、溢(あふ)れるほど出版されていても、日本人など世界の人々は中国と中国人が理解できない。強烈な違和感を覚える隣国は近代から現在に至るまで、ずっと日本の最大の躓(つまず)きの石だった、と著者は看破する。異文化と出会った時(とき)に中国は「外国人嫌い(ゼノフォビア)」と「神秘的な法術(邪教)」で対応してきた。具体的には「反韃子(ダーツ)主義」と「反外国主義」の形式で現れる… [全文を読む]
中国の反外国主義とナショナリズム

中国の反外国主義とナショナリズム

「近現代日本の最大の躓きの石は『中国』であった」。本書はこの刺激的な一文で始まる。ここに著者の問題意識と結論が凝縮されている。著者は、日中関係が今日ここまでこじれている理由が中国人の一貫した行動様式にあり、それは他民族や他国家を蔑視排斥する「反外国主義」の感情にあるという。近代以降における中国のナショナリズムも共産主義も、反外国主義の… [全文を読む]
書評「尖閣反駁マニュアル百題」/中国の「ソフトキル」への対策

書評「尖閣反駁マニュアル百題」/中国の「ソフトキル」への対策

経済発展に自信をつけた中国は、近隣防御戦略(A2/AD)に基づいて海洋進出を図り、南西諸島、台湾、フィリピンと結び9断線に至る第1列島線で囲まれた東・南シナ海における島嶼の領有と海洋資源の独占を目論んでいる。尖閣諸島は、日本が1985年に無主地であることを確認して領土へ編入した日本固有の領土であり、この第1列島線上に位置する南西諸島の… [全文を読む]
日経新聞書評『安源炭鉱実録』

日経新聞書評『安源炭鉱実録』

毛沢東、劉少奇、李立三らが1922年の大ストライキを指導したことで有名な安源炭鉱は、いわば、中國共産黨の「正統史観」に基づく労働運動の発祥地だ。しかし、異端(=反體制)として出発した安源の労働運動は、社會主義國家という「正統性」が確立されると、再び異端(=反革命)の立場に追いやられる。現在、安源には、年金や保険のある幹部や常傭工の他、契約工や臨時工、さらに、レイオフされた従業員や自宅待機… [全文を読む]