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集広舍コラム

Archive for December 2009


歴史時代小説を読む/第23回

雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第23回

書   名『月華の銀橋——勘定奉行と御用儒者』
著 者 名 高任 和夫
発   売 講談社
発行年月日 2009年11月5日
定 価 本体1800円(税別)

徳川5代将軍綱吉といえば、生類哀れみの令や側用人柳沢吉保の重用などで評判の悪い将軍であり、綱吉と吉保のコンビから、私たちは華やかな“元禄”を、そして“赤穂浪士の討入り”を思い浮かべるであろうが、本書『月華の銀橋——勘定奉行と御用儒者』は綱吉の信任を得て、貨幣改革に取り組み、幕府の財政を立て直すことに奔走した勘定奉行・荻原重秀(1658〜1713)を主人公とし、綱吉が逝去するや、6代将軍家宣の将軍侍講(政治顧問)として権勢を振い、重秀を「有史以来の奸物」「極悪人」と弾劾し罷免させた御用儒者・新井白石(1657〜1725)をもう一人の主人公とした歴史小説である。

歴史時代小説を読む/第22回

雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第22回

書   名  『葛野盛衰記』
著   者  森谷明子
発 売  講談社
発行年月日  2009年10月27日
定   価  本体1900円(税別)

日本の古代宮都は平城京から長岡京、長岡京から平安京へと、桓武天皇(737〜806)の時代に、北へ北へと遷都された。中国的な皇帝像を理想としたとされる桓武天皇による2度の遷都造営には巨大な国費と厖大な労働力が必要とされた。
長岡京はかつて“幻の都”といわれ、その実在を疑う向きもあったが、昭和30年からの十数回にわたる発掘調査で、平安京に優るとも劣らない都城であったことが判明している。なぜ長岡京はわずか10年の束の間の都でしかなかったのか。
今日、京都市の東西を、東の鴨川と西の桂川の、二つの川が流れている。賀茂川ともいう鴨川はふるくから鴨川であるが、桂川に関しては、京都盆地流入以南の桂川を、古代人は葛野川(かどのがわ)と呼んでいた。長岡京は葛野川の下流の乙訓(おとくに)郡長岡村に、平安京は葛野川の上流の葛野郡宇太村にそれぞれ造営された。
古代、「葛野」と呼ばれていた桂川流域の平野は京都盆地最古の、しかも最高の豊穣の地であった。本書『葛野盛衰記』の「葛野」は“古代京都”の意味である。

Profile

雨宮由希夫

2006年まで三省堂書店に勤める。神田本店(現・神保町本店)にては新刊書・人文書の仕入れ販売に従事、かつ、作家や将棋棋士などのサイン会を盛んに催した。北方謙三、浅田次郎、柳美里、塚本青史、谷川浩司、羽生善治の各氏とも交流が深い。特に、柳美里さんサイン会中止事件の際の毅然とした行動はあまねく知られ、「90年代の神保町の名物店長」といわれている。
三省堂書店退社後は大学出版社勤務の傍ら、主に歴史時代小説の書評などの執筆を続けている。中国古代・近代をふくめ、源平から幕末維新まではむろんのこと、明治大正期までを背景とした歴史時代小説 の中に、歴史の真実 とそこに生きた人々の息吹きを嗅ぎとることを評論の要とする手法に特色がある。

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