Archive for February 2009
歴史時代小説を読む/第2回
雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第2回
書名『千世と与一郎の関ケ原』
著者 佐藤雅美
発売 講談社
発行年月日 二〇〇九年一月二十六日
定価 ¥一八〇〇E
室町幕府の守護大名で江戸幕府の外様大名であった細川家の歴史、とりわけ、戦国期を生きた藤(ふじ)孝(たか)・忠(ただ)興(おき)・忠(ただ)隆(たか)三代のありようはことのほか興趣をそそられる。
足利十二代将軍義(よし)晴(はる)の落とし胤ともいわれる細川(ほそかわ)藤(ふじ)孝(たか)(幽(ゆう)斎(さい))は異母弟に当たる十五代将軍義昭を担ぎ出しながら、最後に見捨て、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に歴仕して功あり、近世細川氏の祖とされる。
天正十年(一五八二)に本能寺の変が起こる。藤孝は謀反者明智光秀の誘いに応ぜず、剃髪し幽斎玄旨と号して隠居することにより、信長への弔意を示し、秀吉に味方した。
「千世(ちよ)と与一郎の関ケ原」の千世とは、前田利家の娘の千世であり、与一郎とは、忠興の嫡男である与一郎忠(ただ)隆(たか)である。忠興と玉(たま)(細川ガラシャ、明智光秀の次女)が信長の肝いりで結婚したように、忠隆と千世は時の権力者秀吉の媒酌によって結びついている。
歴史時代小説を読む/第1回
雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第1回
書名『源平六花撰』
著者 奥山景布子
発売 文藝春秋
発行年月日 二〇〇九年一月十日
定 価 ¥一七一四E
常磐、俊寛の娘、静御前、熊谷直実の妻、建礼門院など源平争乱の変革期を生きた女人たちが、六つの短編のなかに、歴史の推移と歩調を合わせるように、しかも、美しい日本語で綴られている。また、文学とは声を出して読まれるべきであることを今更のごとく知らされる。
巻頭を飾る【常緑樹】のヒロインの名は「常葉(ときわ)」、言わずと知れた「義経の母」常磐である。
常磐は九条院(近衛天皇の中宮、藤原忠通の養女呈子)に仕えた雑仕女(ぞうしめ)であった。身分は低いが絶世の美女であった常磐はやがて源義朝(よしとも)に見初められ、平治元年(一一五九)二月に、牛(うし)若(わか)(後の義経)を生んでいるが、その年の暮れにおきた平治の乱で彼女の運命は急転する。義朝が敗死した後、常磐は六波羅に出頭し、三人の子の命を救うため、文字通り体を投げ出して平清盛に命乞いをしている。上の二人、八歳の今(いま)若(わか)、六歳の乙(おと)若(わか)は寺に預け、数え年わずか二歳の牛若も成長したら同じく寺に入れるという条件であったという。
中国知識人群像/第3回
李鋭と「09上書」
「党内に李鋭あり」

過日、久しぶりに李鋭を訪ねた。赤いジャンパーを軽やかに羽織り、資料を抱えて書斎を行き来し、自作の詩を朗々と諳んじる姿からはとてもその年齢を伺い知ることはできないが、1917年生まれ、御年92歳の翁である。
北京の胡同から/第10回
「春節」という中国最大のイベントが過ぎた北京。 今年の春節をめぐる最大の話題といえば、結果的には何といっても中央テレビの付属施設の火災だろう。
筆者の家は火災現場からは距離があり、当日は消防車のサイレンが一瞬聞こえただけで、直接火事を目にすることはなかった。具体的な被害の規模、責任の所在なども、他の報道や知人の話などで間接的に知るのみだ。そのため、そういった問題は報道記者の方にお任せし、北京に住んでいる人間として、こちらの人の反応について、いくらかお話したい。
路上の詩/vol.009
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.009

ベッドより 寝心地の良い ベンチなら 髭戸 太
路上の詩/vol.008
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.008

我がベッド 厚さはなんと 半センチ 髭戸 太
路上の詩/vol.007
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.007

試食品 かわいいトレーに 入ってる 髭戸 太
バウルの便り/第5回
インド西ベンガルの村からバウルの便り
「賢い白鳥は水で薄められた乳からでも、純粋な乳だけを飲む」

ベンガルが一番寒くなるベンガル暦のポーシュ月(今年は12月17日から1月14日)とマーグ月(2月15日から2月12日)。ビルブム県とバルドマン県を南北に分けて流れるガンジス川支流のオジョイ川に沿ったジョイデブ村は深夜から明け方過ぎまで深い霧に覆われます。どこまでも続く河の両岸を埋める砂は日 中は白く眩しく太陽の光を照り返し、日が沈むとたちまち熱を放ち村中を冷やしながら闇の中に姿を消していきます。そしてこのポーシュ月の最後の日から3日間、毎年バウルたちの最大のお祭りが催されます。
燕のたより/第6回
「反革命の鴉と反革命の笑い:言葉のメラミン汚染」劉燕子

私が幼稚園と小学校のときは、文化大革命のまっただ中で、小学校一年生の第一課は「毛主席万歳!」、第二課は「中国共産党万歳!」、第三課は「戦無不勝的(必勝不敗の)毛沢東思想万歳!万歳!万万歳!」でした。学校の入口、壁、掲示板、教室の前の横断幕、後ろの黒板にチョークで書いた「新聞」など、至るところに「××を焼きつくせ!」、「××の犬の頭を叩きつぶせ!」、「××の犬の足を油で揚げろ!」、「××打倒」、「××撃破」、「××撃退」、「××粉砕」、「××摘発」、「××陪闘(連座のように主に糾弾される者の傍に引き出して一緒に非難する」、「××を闘争集会にかけろ(大勢でスローガンを怒号しながらつるし上げる)」、「××を砲撃せよ」、「××を殲滅せよ」、「××を奪権」、「牛鬼蛇神の××」、「全党全軍全国人民全国紅小兵(紅衛兵より年少の小学生)をあげて悪党の××を討伐せよ」……
このように狂気に満ちた血なまぐさい言葉の氾濫のなかで、個人の尊厳を省みる憐憫の情をはじめ、あらゆる人間性が捨て去られ、さらに真実までも覆いかくされてしまいました。
路上の詩/vol.006
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.006

雨ふれば 一日中でも 雨宿り 髭戸 太
路上の詩/vol.005
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.005

百円で 買ったシートが 我の部屋 髭戸 太
路上の詩/vol.004
路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.004

公園の ベンチで迎える お正月 髭戸 太
中国知識人群像/第2回
続・劉暁波:「未来の自由な中国は民間にあり」

本・人・旅
本とパソコン、そしていくつかの原稿の締め切りを抱えながら、日本と中国を行き来している。1冊の本と出会い、その著者や本に関わる人物に会うために旅をし、交わした言葉を思い返しながらまた本を読み、そして書くことが、この数年来の日常になった。
前回紹介した劉暁波の『未来的自由中国在民間』は、原稿を書き終えて一度は書棚に戻したのだが、ふと思い立って北京行きの旅支度に加えた。本の中表紙に、購入した日付と書店の名前を記すのはいつの頃からかの習慣で、「2006年11月18日、香港・田園書屋」とある。この本が2005年の11月にアメリカで出版されたことは劉暁波本人から聞いたのだが、北京で購入できるはずもなく、ようやく手に入れたのは出版の翌年のことだ。
そういえば、劉暁波の代表的な言説が日本で本格的に紹介された翻訳書『現代中国知識人批判』の出版を著者自身が知らずにいて、驚いた私が日本から持参して贈ったところ、とても喜んでくれたことが劉暁波との不思議な縁となった。「今度ゆっくり食事をしながら話をしよう」というお誘いを頂いて、その折には『未来的自由中国在民間』にサインをお願いしようと思いながら、果されないまま時間が過ぎている。未だ拘束中の劉暁波に会うことは叶わないが、この数日北京で改めてこの本を読み返しているので、今回は劉暁波についての続編をお届けしたい。
北京の胡同から/第9回

北京に798芸術区という場所があるのをご存知だろうか。2002年頃から、国営の軍需電子部品工場の跡地が芸術家や画廊が集まる前衛的なアート・スポットとして成長を始めたもので、その後、次第に商業的色合いを濃くし、現在は現代アートの鑑賞スポットとしてだけでなく、おしゃれや流行に敏感な若者のショッピングやデートの場、また映画やドラマのロケ地としても大人気だ。現在ヒット中の春節映画「非誠勿擾」でも、798芸術区内のカフェが男女のお見合い場所として登場する。
ところが昨年秋からの金融危機の影響を受け、この798でも新たなテナントを募集する張り紙が増え、大手画廊のいくつかが撤退を予定しているとの噂がささやかれるようになった。















