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集広舍コラム

Archive for May 2009


歴史時代小説を読む/第8回

雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第8回

書名『海王 上・下』
著者 宮本昌孝
発売 徳間書店
発行年月日  二〇〇九年一月三十一日
定価  各¥2200E

   ページを開いたが最後、読みきらずにはおれない傑作である。しかも読み終えた後も主人公たちのイメージが心にこびりついてはなれない。
 この『海王』という歴史・時代小説の魅力をどうしたら他人に伝えることができるだろうか。一体、何がそれほど魅力なのか。無論第一に、その小説の内容である。『海王』は青春の結実のような一個の男の行動を描いている。これがいちばん単純にして明瞭な魅力である。
 歴史には〈原風景〉がある。作者はいかなる意味においても、その〈原風景〉から逃れることはできない。本能寺の変に関して言えば、明智光秀が1万3千の兵で包み込み、信長は森蘭丸以下百人足らずで応戦するが、所詮、衆寡敵せず、信長は本能寺で横死するのでなければならない。それが〈原風景〉であり、信長が生 きのびるのは歴史小説の〈原風景〉とは言えず、かぎりなく時代小説に近いものと言うほかない。

燕のたより/第10回

農村! 農村!
ふるさとは遠きにありて思うもの そして悲しくうたうもの(2)

(1)私のおじいちゃん・劉澤霖

 今年の春に帰郷したとき、お父さんの父、つまり父方のおじいちゃんのお墓参りをしました。おじいちゃんは劉澤霖といいます(字は念慈、若愚。1895年~1969年)。
 今から40年以上も前、1965年、「大四清」(主に農村基層幹部に対して政治、思想、組織、経済の四つを清める政治運動)のとき、故郷の湖南省耒陽市(湖南の東南で省都長沙市から約200キロ)から、おじいちゃんの所属していた北京林業設計院に、おじいちゃんを告発する一通の手紙が送られてきました。劉澤霖は「逃亡地主」、「階級区分から漏れた地主」だという誣告の手紙でした。

路上の詩/vol.017

路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.017

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野に寝ると 花火の後に バイク音     髭戸 太

路上の詩/vol.016

路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.016

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夏祭り 皆が帰れば 銭拾い       髭戸 太

路上の詩/vol.015

路上の詩 [ホームレス川柳]/vol.015

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妄想で カキ氷食う 暑さかな       髭戸 太

歴史時代小説を読む/第7回

雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第7回

書名『空白の桶狭間』
著者 加藤 廣
発売 新潮社
発行年月日  2009年3月25日
定価  ¥1600E

桶狭間の戦いは、永禄3年(1560)5月19日、織田信長が今川軍を尾張国桶狭間村(現・名古屋市緑区有松町)の丘稜地帯で破り、総大将今川義元の首まで取った戦いである。奇襲戦の代名詞であり、日本戦史に特筆される桶狭間の戦いであるが、この戦いには謎が多い。
通説では、足利氏の支族である今川氏の棟梁義元が、すでに権威は地に墜ちていた足利将軍家を補佐して四海統一を朝廷に奉せんがため上洛の途についたとされる。足利氏にとって代わろうとしたとする説もある。
信長など眼中にない義元は威風堂々、西上して来る。過大に見積もっても動員兵力わずか5千の信長が、過少に見ても3万にほど近い今川の大軍をなぜ打ち破ることができたのか。

燕のたより/第9回

「三自愛国」教会の城南堂を見聞して
ふるさとは遠きにありて思うもの そして悲しくうたうもの(1)

(1)城南堂の由来

 中国語で日曜日は「星期日」や「星期天」のほかに、「礼拝天」ともいいます。キリスト教徒の礼拝日に由来しています。  3月15日、日曜日、帰郷していた私は両親と、長沙市内中心部に位置する中華基督教長沙市城南堂(城南教会)に行きました。私たちは洗礼を受けたクリスチャンではありませんが、礼拝に出てみました。

北京の胡同から/第14回

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本屋さんのウェブサイトということで、今回は現在開催中の「本の市」にまつわる話題をお届けしたい。

今年の春も、北京の地壇公園で恒例の「書市(本の市)」が開催された。主催は共産主義青年団北京市委員会、北京市書刊発行業協会ほか。実行組織は北京青少年服務中心、北京市新聞出版服務中心、そして北京市新華書店だ。
会期は4月30日から5月11日までの12日間。同種の市は、年に3回ほど行われている。日本で本の市といえば、いわゆる各出版社の見本市であるブックフェアや古本市が連想されるかもしれない。だが、北京の「書市」は、いわば「本のお祭り」だ。

バウルの便り/第6回

インド西ベンガルの村からバウルの便り

“好い”と“悪い”の真ん中に、
“あるがまま”が極めて秘密裏に存在する

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ベンガルの人々が「虎」と呼ぶ今の季節の太陽。その虎が牙をむき出しにする前、わずかな朝の涼しい時間に仕事を済ませようと、村では夜が明ける前から人々が動きだします。今年は雨の日がほとんど無く、例年であれば5月頃からベンガルに流れてくる熱風が、今年はすでに4月の半ばから猛威をふるい炎暑が続いています。バス道路に面した木々たちは、乾いた土埃を被り息苦しそうに雨を待っているように見えます。人々もまた雨を待ちます。夕方になると少しでも風のある場所を見つけてどこからともなく人が集まり、涼みながら空を仰ぎ雲の様子を窺います。雨だけがもたらしてくれることの出来る涼しい風は、人間にも、動物にも、木々にも、ひと時の安らぎを与えてくれるのです。枝にぶら下がる若いマンゴーたちもまた雨を待ちます。果実は雨後、大地から蒸発した水蒸気のために蒸し風呂のようになった暑さの中で熟れていきます。

燕のたより/第8回

汪全勝という名の幼なじみ・六四天安門事件20周年にあたり
劉燕子

「真の猛士はあえて惨憺たる人生に直面し、あえて淋漓たる鮮血を正視する(魯迅「色淡き血痕のなかに」丸尾常喜訳)

(1)

 去年の12月、関西空港と故郷の長沙(湖南省省都)との間に直行便が運行されるようになり、春休みに帰郷しました。この直行便は、湖南省人民政府の全面的な支援で、南方航空公司が週一往復の定期便を運行しています。十数年前、私が留学で大阪に来たときには、夢にも思わなかったことです。
 来日してからアッという間に18年が経ちました。光陰矢の如し。白駒隙を過ぐ。まさにそのようでした。この18年間、長沙は中国の他の都市と同様に激しく変貌しました。日本から出店した平和堂や北京から出店した王府井などのデパートでは物価が上昇していますが、レストランはどこも満員で、不景気には見えませんでした。

中国知識人群像/第4回

北京とプラハを結ぶ知識人たち

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「08憲章」と「憲章77」

その写真は、30余年の時を超えて、志を同じくする人びとが巡り会った歴史の一場面を写したものだ。ステージ上には、穏やかに微笑む劉暁波の写真が掲げられ、自信に満ちた表情で胸を張る人たちの姿がある。 2009年3月11日、チェコのプラハで開催されたOne World 09 Human Rights Film Festivalの開幕式で、2008 Homo Homini Awardの授与が行われた。受賞したのは劉暁波と「08憲章」の全署名者で、写真はその授賞式でのひとコマだ。

歴史時代小説を読む/第6回

雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第6回

書名 『九重の雲 闘将桐野利秋』
著者 東郷 隆
発行所 実業之日本社
発行日 2009年3月25日
定価  2200円

悲痛にも兄と別離し、西郷家で唯一政府側にあって兄や弟を敵にした西郷隆盛の弟・従道(つぐみち)は、西南戦争について、「兄・隆盛が桐野利秋ほか過激な連中に担がれ蹶起を余儀なくされたもので、あくまでも兄の意志にあらず」とした。
桐野を西南戦争を引き起こした張本人・首謀者と見ることによって、明治維新の元勲たる“大西郷”の叛意が乏しいことをことさらに強調し、西南戦争を「桐野の戦争であった」とさえ称することは、西南戦争の直後にすでに見られたことであった。