Archive for September 2009
歴史時代小説を読む/第16回
雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第16回
書名『芙蓉千里』著者 須賀しのぶ
発売 角川書店
発行年月日 平成21年6月30日
定価 本体1600円(税別)
日露戦争の4年後、この物語のヒロイン、フミは楡の葉が陽光にきらめき、リラのあまい香が漂う国際都市・哈爾濱(ハルビン)にやって来る。
哈爾濱はロシアの極東侵出の拠点として、ロシア人が造った町である。
松花江に面した哈爾濱の地を帝政ロシアは中国国内に敷設するシベリア鉄道の短絡線である東清鉄道の建設拠点として選んだ。
12歳のフミの夢は「大陸一の女郎になる」ことであった。
当時、満洲へは日本人売春婦が毎年、大挙して入り込んでいった。「哈爾濱総領事館の1907年12月末の調査報告によれば、哈爾濱市在住の日本人は、男292、女335の計627人で、女のうち約半数に当たる176人が売春婦」(倉橋正直著『北のからゆきさん』1989年刊)であった。ロシア人は新開拓地に初めに寺院を立てるが、日本人はまず女郎屋を立てるといわれた所以である。
歴史時代小説を読む/第15回
雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第15回
書名『道誉と正成』
著者 安部龍太郎
発売 集英社
発行年月日 2009年8月10日
定価 ¥1700E
大塔宮護良親王(「おおとうのみやもりよししんのう」。「だいとうのみやもりながしんのう」とも)は類希な動乱の世、南北朝の抗争の中で謀殺された悲劇の皇子である。元弘の乱による後醍醐天皇の隠岐配流中、倒幕運動の旗頭として大きく貢献しながら、皇位簒奪を企てたとして、謀反の疑いで逮捕され、中先代の乱の際、敗走する足利直義の命令により鎌倉で殺された。
大塔宮の身柄がなぜ足利方に引き渡されたのかは南北朝史の謎であり、古来、諸説がある。作者がどのような謎解きをするのか興味を持って本書に臨んだ。
本書の主人公は書名に著すごとく、楠木正成と佐々木道誉のふたりである。方や「悪党」、方や「バサラ」の典型として、ともに時代が生んだ強烈な個性を持つ人物であった。
歴史時代小説を読む/第14回
雨宮由希夫の歴史時代小説を読む/第14回
書 名 『海商 異邦の人ジョン・M・オトソン』
著 者 柳蒼二郎
発行所 徳間書店
発行年月日 2009年7月31日
定 価 ¥1800E
アジアの近代はアヘン戦争にはじまり、日本の近代はペリーの来航にはじまるといわれる。日本と中国の近代化はそれぞれ異なった道を歩み、交錯するのは明治期の日清戦争であるが、アヘン戦争以降の時代を背景とした日本と中国を結んだ物語を描くことはできないものかとかねてから思っている。その際、日本と中国を結ぶ人物を思い浮かべるとしたら、音吉であろう。
江戸期の漂流民として、本書の主人公のジョン・M・オトソンこと山本音吉はジョン万次郎やアメリカ彦蔵ほどには知られていないというべきであろう。















