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集広舎

インド解き放たれた賢い象/書評・日本経済新聞

世界史的な転換、内部からの報告

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インドが一九九〇年代以降、グローバル化の流れに乗るようにして急速な経済成長を遂げたこと、その成長を指導したのが知識産業としてのIT産業であることは今ではよく知られている。しかし逆に、インドがなぜ九〇年代に入るまで離陸(テークオフ)し得なかったのか、その歴史的理由はそれほど理解されていない。  本書はインド独立後の経済体制が、その内向的・統制的体質のゆえに、長らくインド経済、取り分け企業の潜在的な能力を窒息させてきたことを、経営者として野水からの経験を縦横に交えつつ、余すところなく描いている。
 著者はインドの生みの親、ネルーがこの国に民主主義を定着させたことを高く評価しながらも、市場経済と起業家に対する不信感ゆえに、国家と官僚制度に過剰な期待をして、四十年近くもインド経済を停滞させたことを容赦なく批判する。
 しかし、九〇年代初頭に始まった経済自由化政策が、インド経済の潜在的な能力を解き放った。新しく登場した起業家や新・中流階級の将来に対して、著者は楽観的である。半世紀以上の民主主義の実践によって、インド社会の底辺にいる下位カーストがその地位を引き上げつつある事態も積極的に評価している。
 もちろん、著者はインド人がかつて「産業革命」に失敗したことも、インド社会が今なお様々な弱点を持つことも謙虚に認める。しかし、世界が「工業経済」から「知識経済」に移行しつつある中で、今やインドが顕著な競争優位性を持ちつつあると指摘。「インド人の大部分は今世紀初めの二十五年で中流階級になるはずだ」とまで断言している。
 だが、本書を読みとおすならば、これは決して誇大な言明ではないと感じさせられる。なぜならば、本書が経営者としての経験のみならず、一級の知性を併せ持つ著者による、インド経済についての均衡の取れたインサイダーリポートとなっているからである。私たち日本人は、本書から現在インドで生起する事態が世界史的な意義を有する大転換である、というメッセージを受け取るべきであろう。

日本経済新聞 2009年(平成21年)5月17日(日曜日)
大阪市立大学教授 脇村 孝平

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書名:インド解き放たれた賢い象
著者:グルチャラン・ダース
訳者:友田浩
A5平/418頁
定価 3,486円(税込)
発行:集広舎
発売:中国書店
ISBN:978-4-904213-04-9 C0098 ¥3320E
インド人による初めての本格的なインド紹介の本と評判の『インディア・アンバウンド』の邦訳。ノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センも「自叙伝、経済分析、社会調査、政治点検およびビジネス展望が、ない交ぜになってインド理解へと導く素晴らしい本」と絶賛する。

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