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プレスリリース/殺劫(シャーチェ)チベットの文化大革命

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シャ−チェ
   殺 劫 チベットの文化大革命
 ツェリン・オーセル著   ツェリン・ドルジェ 写真
  藤野彰/劉燕子訳 A5判並製 412頁 定価 四八 三〇円

1976年に幕を閉じた騒乱十年の中国文化大革命につ いては、様々な調査研究と報告が乱れ咲いている が、チベットで行なわれた文革の大衆運動の実態 は、これまでほとんど報じられていない。そこには 漢民族とチベット族、さらには各民族間の歴史的な 相克、およびチベット仏教を柱とする深刻な宗教問 題などが複雑にからみ合い、チベットの文革騒乱の 実情報告は、現地で深く関与した人民解放軍や、中 国共産党中央のタブーとして、日の目を見ないでい るのであろう。
 ところが、その空白の一部を埋める驚異的な資料 が、著述家であるチベット人の女性の手元から明る みに持ち出された。それは文革当時、チベット駐屯 の解放軍の中級士官だった彼女の父ツェリン・ドル ジェが、趣味のカメラを駆使して大衆運動の現場を つぶさに撮影した、数百枚におよぶネガフィルムで あった。
 事件や事象を説明するのに写真ほど雄弁な手段は ない。
1999年の春、文筆家の彼女ツェリン・オーセルは、 八年前に亡くなった父が撮り溜めた写真を公開し、 チベット文革の真実を世に知らせるべきではないか と考え、生存している画面上の主要人物や、当時の 紅衛兵、行政幹部、とくに大衆から手荒くつるし上 げられている「反革命」人物本人など七十人以上の 生存している関係者を、六年にわたり探し回った。 そして、直接彼らの詳細な証言や、四十数年前の思 い出話を聞き出し、かつ克明に記録し、談話を録音 したのである。これは、現在でも中国においては、 ある種の危険を伴う行為である。2003年に彼女が出 版した散文集『西蔵筆記』は、その筋から発禁処分 を受け、彼女自身は公職を解かれたという。
 苦心して集め得たデータをもとに、彼女がまとめ た二冊の本『殺劫』と『西蔵筆記』は、中国では発 表出来ず、2006年台湾で刊行され注目を浴びた。  昨年チベットで大規模な抵抗運動が勃発したこと は記憶に新しいが、長い間、当局が沈黙を守ってき たチベットの文化大革命時代への民衆の鬱憤も、原 因の一端といえよう。強いられた忘却の替わりに登 場する記憶こそが歴史であり、民族の文化である。  いまスポットライトが遠いチベットの闇を照らし 始めようとしているのだ。
 かくして『殺劫』の日本語版が、藤野彰読売新聞 編集委員と、日本在住の中国人女性で新進気鋭の文 筆家劉燕子の共訳により出版されることになった。 初めて公開された多量の貴重な記録写真を含む、四 百ページを越す労作となっており、当時チベットで 吹き荒れた殺伐な大衆運動を、詳細かつ平明流暢な 訳文で述べ、中国少数民族の将来にわたる問題も提 起している。
 原作者ツェリン・オーセルはいう。
「何千何万のチベット人が払った気高い犠牲が、北 京五輪の見せかけの繁栄に呑み込まれた。作家は発 言しなければばらない。著述とは祈ることであり、 証人になることである」と。

目 次

——ツェリン・オーセル
序——王力雄
写真について——ツェリン・オーセル
日本の読者へ——日本語版序
第一章 「古いチベット」を破壊せよ——文化大革 命の衝撃
第二章 造反者の内戦——「仲の良し悪しは派閥で 決まる」
第三章 「雪の国」の龍——解放軍とチベット
第四章 毛沢東の新チベット——「革命」すなわち 「殺劫」
第五章 エピローグ——二〇年の輪廻
参考文献
解説  チベットの文化大革命——現在を照射する
歴史の闇    藤野彰

嵐を生きた中国知識人