中華郵便局の歴史地理
著者/森 勝彦
発行/中国書店
四六判/上製本/206頁
定価/3,780円(税込)

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中華世界の広大な空間で郵政ネットワークはいかにして展開したか。

【本書『はじめに』から】
 そもそも近代郵便局の空間的展開を取り上げることは、国家郵政を通して国土空間の近代的再編過程や郵政機構が認識した国土空間の編成過程を明らかにすることである。しかし中国の場合は国家郵政の他に、民信局や客郵局が存在したことにより、それらの空間編成の特徴や郵政局空間との競合・対立なども取り上げていかなければならない。また、本書のタイトルを「中華」郵便局としたのは、この時期の中国の各種の郵便局の活動、分布、競合などは中国国内で完結するものではなく、民信局の一種である批信局が活動し客郵局の本局があった東南アジアや東アジアの近代空間の中で位置付けられるものであるからである。郵政局はそのネットワークを展開する中で、客郵局のネットワークを利用して海外経由で辺境地域に逓送したり、批信局のネットワークを利用して東南アジアへの送金業務を行った。一方、民信局の前身とも考えられる鏢局は中国固有の文化、社会と密接につながっており、近代国家の形成の枠組みだけでなく、「中華」世界の時空間の文脈の中で理解するのが望ましいと思われる。
 本書の主たる対象時期は十九世紀末から二〇世紀前半であり、歴史地理学の分野では近代化の歴史地理に属するテーマである。中国が東アジア、東南アジアの近代に組み込まれていく過程で、地域性を支えたもの、変化を促進したもの、統合や組織化に向かわせたもの、あるいは分裂を指向させたものなどの歴史地理的な基本視座を考える際、中華世界の近代で展開した各種の郵便局の動向は示唆に富んでいる。

【著者略歴】
森 勝彦/1953年、鹿児島県生まれ。1976年、東京教育大学文学部卒業。1985年、筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得退学。1989年、鹿児島経済大学助教授。2011年、北京大学城市環境学系歴史地理学教室留学。現在、鹿児島国際大学国際文化学部教授。