978-4-904213-29-2書名/内モンゴルから見た中国現代史
副題/ホルチン左翼後旗の「民族自治」

発行日/2015年05月
著 者/ボヤント
発 行/集広舎
A5判/上製/412頁
定 価/6,400円+税

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楊海英(静岡大学教授)推薦

■解説
日本人に伝えたい戦後の内モンゴル東部地域の姿。旧満州国に属し、日本と協力し合った内モンゴル東部地域のモンゴル人たちは、新中国建国後、土地、宗教、文化、そして民族の誇りを奪われた。旗や村の末端単位でフィールド調査を敢行。公文書と証言から実態を明かす。

■著者プロフィール
ボヤント(宝音図)
内モンゴル出身。2001年4月に来日。2006年3月、国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了。2010年3月、同大学院政治学研究科博士後期課程を満期単位で退学。2014年3月、桐蔭横浜大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)学位。主な研究は、中国の民族政策や民族区域自治制度、および満州国時代に日本の近代教育を受けたモンゴル人たちが社会主義時代に遭遇した政治運動の実態。

■目次
序 研究する地域/研究方法/研究構造など
第一章 中国「民族区域自治制度」に関する幾つかの問題
 自治とは何か/中国における「民族」の概念及び「少数民族」の認定/中華人民共和国憲法と「民族区域自治法」/「民族区域自治制度」と「民族区域自治法」
第二章 ホルチン左翼後旗における土地改革
 後旗の歴史的背景/中国共産党と国民党勢力の後旗への浸透/後旗における土地改革/「反革命鎮圧」と「三反運動」
第三章 後旗における社会主義改造と民族
 農牧業に対する「互助組」・「合作社」の成立/「 互助組」・「合作社」が生み出した問題/「互助組」・「合作社」の自治機関との関わり/公文書から読む「社会主義改造」の実態/「社会主義改造」によって生み出された問題
第四章 宗教への打撃
 後旗における宗教の歴史的背景/宗教会議の問題点/宗教に関する公文書の分析(1)(2)/チョルート公社における宗教弾圧
第五章 「反右派闘争」と「大躍進」がもたらしたもの
 問題意識の所在と政治的背景/後旗における「反右派闘争」とその影響/後旗における「大躍進」運動の実態/自治制度と「反右派闘争」、「大躍進」
第六章 後旗「民族分裂案件」
 歴史的背景と政治的背景/「 民族分裂案件」のプロセス/公文書での「民族分裂案件」/案件からわかること
第七章 モンゴル人にとっての文化大革命
 問題意識の所在と先行研究/後旗における文化大革命のプロセス/「 文化大革命」の犠牲者の数と影響/現地の当事者たちが語る証言

 書評 BOOKREVIEW

留学生の宝氏、福岡の出版社から「内モンゴルから見た中国現代史」

 中国内モンゴル自治区出身の宝音図(ボ・ヤント)氏(39)が『内モンゴルから見た中国現代史』を出版した。
 宝氏は平成13年、留学で来日し、現在は桐蔭横浜大院生。中国政府が自治区内の民族をどう統治し、漢民族の影響力を強めていったかを、関係者のインタビューなどを通じて、丹念に解明した。約400ページの力作だ。
 中国共産党が歴史資料を改竄(かいざん)し、モンゴル人の土地を奪い、生活を一変させ、多くの人々を死に追いやった実例も紹介している。チベットやウイグルなど中国が抱える民族問題に通じる。

産経新聞 2015.6.26 (九州・沖縄版)

 書評 BOOKREVIEW

「少数民族」迫害の実態浮かぶ

 中国の北部にある内モンゴル自治区は、もともとモンゴル人が多く暮らしていたが、現在では漢族が多数派となっているところだ。そのうち今もモンゴル人がわりあい多い東部地域に焦点をあて、共産党の支配下で彼らに何を起きたのかを明らかにしようとしたのが、本書である。
 公文書やインタビューを通じてまざまざと浮かび上がるのは、モンゴル人に対する政治的、経済的、文化的、宗教的な迫害の数々だ。主に文化大革命までの時期を対象にしているが、今の中国に通じる問題もあぶり出している。法律より共産党の文書や幹部の言葉が重きをなる実態。憲法などがうたう「自治」や「信教の自由」といった言葉が持つ独特の意味合い…。
 一方で、日本がかつて滿洲国を打ち立てたことが後々まで深刻な影響をモンゴル人たちに与え続けた歴史も、改めて思い知らされる。日本人として特に痛切の思いを禁じ得ない点である。
 筆者は内モンゴルから来日した研究者。周知のように中国では、共産党政権が自らに都合の悪い歴史の研究を弾圧している。本書のように、いわゆる「少数民族」の側からの歴史の研究は、ほとんど封殺している。大部の学術書で読みやすいとは言いがたいが、敬意を表したい一冊であり、日本で出版する意義は大きい。

日本経済新聞 2015年(平成27年)7月26日(日)読書面

「史学雑誌」第125編10号

新刊紹介として本書が掲載されました。執筆者は広川佐保氏です。当会のご許諾をいただき一部紹介いたします。

本書は、中国内モンゴル自治区通遼市に位置するホルチン左翼後旗において
1945年~1970年代までに展開された民族自治に関する専著である。

 本書は、旗・盟の文書史料と関係者への聞き取りを通じて、史実を掘り起こした貴重な研究成果であり、他に類を見ない研究となっている。モンゴル語表記の方法、用語や構成の不統一などが惜しまれるものの、本書は旗レベルの研究として、一定の指針を示したといえよう。本書が明らかにしたように一九四五年以降、後旗では多くの政治的運動が展開されてきたが、それが旧来のモンゴル社会内部の体制や人的関係、さらにいえばモンゴル社会内部の対立関係といかに連動したかを明らかにすることが今後の課題になるであろう。

広川佐保・2016年10月20日 公益財団法人史学会編集発行