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書名:現代中国の民族政策と民族問題
副題:辺境としての内モンゴル
著者:リンチン(仁欽)
集広舎刊/定価:5,500円+税
ISBN:978-4-904213-339 C0093

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1950、60年代の内モンゴルは果たして「民族自治の黄金時代」だったのか?

【解説】
放牧地開墾や漢人入植の実態と影響、末端地域における政治や言語政策、それに土地改革革改革、反右派闘争、大躍進、文化大革命などの分析を通じて、中国でいち早く民族政策が実施された内モンゴル社会の変化を明らかにする。

【目次】
序論
第1部 1950 年代の社会改革期における諸問題
 第1章 綏遠省蒙旗土地改革における問題
 第2章 牧畜業の社会主義的改造の再検討
 第3章 牧畜業地域における人民公社化政策の分析
 第4章 1950年代のモンゴル言語・文字使用の実態
第2部 経済的統合の拡大と漢地化の加速
 第5章 「大躍進」期における放牧地開墾と人口の問題 運動の展開
 第6章 国営農牧場・生産建設兵団の建設と漢地化の推進
第3部 政治運動の推進とイデオロギー的統合の強化
 第7章 反右派闘争におけるモンゴル人「民族右派分子」批判
 第8章 「四清運動」における民族問題
 第9章 知識青年下放運動の検討
結論

【著者略歴】
リンチン(仁欽)1963年生まれ、モンゴル人、内モンゴル自治区出身。内モンゴル師範大学歴史学部卒、東京外国語大学大学院地域文化研究科博士前期課程修了、2010年同大学大学院博士後期課程修了、博士(学術)。日本学術振興会外国人特別研究員、愛知大学を経て、現在、内モンゴル大学モンゴル学研究センター副研究員(準教授)。専門は、現代中国の民族問題と民族政策。主要論文に「反右派闘争におけるモンゴル人『民族右派分子』批判」(『アジア経済』第48巻、第8号、2007年)、「内モンゴルの牧畜業の社会主義的改造の再検討」(『アジア経済』第49巻、第12号、2008年)、「内モンゴルにおける知識青年下放運動とその背景、影響に関する検討」(『アジア経済』第54巻、第12号、2008年)ほか。

BOOKREVIEW

内モンゴル「先住民」の苦難

 ウイグル人が多く住む中国の新疆ウイグル自治区では最近、有力紙の元編集長が共産党から除名された。民族問題について「中央」の路線とは異なる言論活動をしたため、という理由だ。似たようなことは半世紀以上前の内モンゴル自治区でも起きていた。そう本書は伝えている。
 中国の民族問題と聞けばチベット人やウイグル人を思い浮かべる人が多いだろう。ただ、内モンゴルの「先住民」であるモンゴル人たちへの経験こそ、共産党政権の民族政策を考えるうえでは重要だ。早くに共産党の支配下に入ったこともあって、いわば試金石となってきたからだ。
本書は主に50年代から60年代に焦点をあてて、モンゴル人たちの苦難を描いた歴史書だ。たとえば経済の面で、モンゴル人の伝統的な生業である牧畜業が「おくれたもの」とされ、その基盤である牧草地がやみくもに農地に転用され、やがては砂漠化していった事実を、多くの史料で浮き彫りにする。
 少数民族の苦難に光りをあてた歴史書が中国で日の目を見るのは難しい。内モンゴル出身のモンゴル人である著者が日本語で本書を公刊した意味は大きい。本書があぶり出す内モンゴルの実情は、チベット人やウイグル人が置かれている現状を理解するのにも役に立つはずだ。(集広舎・5500円)

日本経済新聞 2016年(平成28年)1月3日(日曜日)読書