小社刊『チベットの秘密』の紹介が、編訳者の劉燕子さんへのインタビューを交えて、2003年1月5日(土)付け産経新聞夕刊(関西版)の「関西新刊案内〜著者を訪ねて」に掲載されました。許可を得て転載させていただきます。【集広舎編集室】

産経新聞関西版『チベットの秘密』書評

〝証人〟が照らし出す真実

「著述とは祈ることであり、巡り歩くことであり、証人になることである」。こう語るチベットのラサ出身で、中国北京市在住の作家・詩人、ツェリン・オーセルさんは現在、中国政府がパスポートを発行しないため出国できずにいる。
 中国政府は漢民族をチベットに大量移住させる政策を続け、チベット人の政治的自由や言語、宗教、文化を抑圧してきた。これに抗議するチベット人の焼身自殺は近年、後を絶たず国際問題となっている。
 新刊「チベットの秘密」はオーセルさんと中国の作家で夫、王力雄さんとの共著。オーセルさんは詩などの創作で、チベットの歴史の闇に光をあて、メッセージを発信し続けている。
「オーセルさんの詩はロマンチックなメルヘンでも政治的な告発でもない。野蛮な暴力の前であまりにももろくはかない人間を愛し、人にとって何が大切かを照らし出す柔かで奥深い輝きなのです」。本著の翻訳者、劉燕子さんはオーセルさんの代弁者として語る。平成3年に中国から留学生として来日。以来、大阪市で暮らす劉さんは現代中国文学者としての視点からチベット問題を分析、中国の圧政を批判してきた。
 オーセルさんはチベットにおける文化大革命をテーマにラサなどで取材、ルポルタージュ「西蔵記憶」を2003年に発行したが、中国政府から発禁処分を受け、現在はフリーの作家、詩人として活動している。
 劉さんは一昨年末、北京でオーセルさんと会った。「中国政府の彼女への監視は強まり、昨年3月から自宅軟禁されたままです」と現状を憂いながら劉さんは訴える。「権力に飼い慣らされず、粘り強く批判や問題提起する者は永遠に亡命者であり続けなければならないのでしょうか」

(戸津井康之)