西日本新聞2017年(平成29年)1月29日「読書館」に、小社刊『社会的連帯経済入門』の書評が掲載されました。〔集広舎編集室〕

西日本新聞2017年(平成29年)1月29日「読書館」

社会的連帯経済入門書名:社会的連帯経済入門
副題:みんなが幸せに生活できる経済システムとは
著者:廣田裕之
発行:集広舎
判型:A5版ソフトカバー
発行日:2016年12月10日
価格:本体1500円+税

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 社会的連帯経済とは、非資本主義的な論理で社会や環境に貢献する経済活動の総称であり、具体的には協同組合、NPO、社会的企業や、貧困者向け金融のマイクロファイナンスなどを指す。3年前にフランスで「社会的連帯経済法」が可決されるなど、特に欧州や中南米で積極的に導入されている。

 企業が株主の利益を考えて経済活動を行う資本主義とは異なり、メンバーが所有者かつ運営者であるため、活動がメンバーの利益のためにある。平たく言えば、自分たちによる自分たちの経済である。その意味で、政府の意向で活動する社会主義とも異なる。こうした新しい経済活動は必然的に資本主義、中でも新自由主義に対する批判を伴う。本書はスペイン滞在中の筆者が、世界での活動事例を通じて社会的連帯の各分野を解説したものだが、同時に現行の通貨制度が富の集中を生み出すしかない点など、今の世界経済の限界を指摘し、社会的連帯経済の可能性を強調している。

 石油依存から脱却するために地元産のバイオマスのエネルギー使用を推進するホンジュラスのゴタ・ベルテなど、本書で紹介された事例の多くは日本で知られていない。今では以前から産直提携や地域通貨など同様の活動がおこなわれてきたが、大きな潮流には至らず、今やこの分野では世界から遅れを取っており、関心も低いと言えよう。

 中南米でこうした活動が盛んな一因としては、20世紀後半の親米右派政権下で国内産業の不振や貧富格差が深刻化した点がある。格差拡大、過疎などの問題が慢性化し、資本主義諸制度のきしみが出ている日本でも、もっと注目されてよいのではないか。

 本書では過疎化が進む農村で、外からの購入に頼ってきた味噌(みそ)、パンなどを地元で手がけ、協力者に対して地域通貨を払うことで地域振興を図る、といったユニークなアイデアも紹介されている。現行の経済にどっぷり浸かりつつもそれに満足できない人に多くのヒントを与えてくれると思う。

(ルポライター・麻生晴一郎)
西日本新聞2017年(平成29年)1月29日 日曜日

■著者略歴
廣田裕之(ひろた・やすゆき)
1976年福岡県生まれ。1999年より地域通貨(補完通貨)に関する研究や推進活動に携わっており、その関連から社会的連帯経済についても2003年以降関わり続ける。スペイン・バレンシア大学留学中、同大学社会的経済修士課程修了。著書『地域通貨入門──持続可能な社会を目指して』(アルテ、2011〔改訂版〕)、『シルビオ・ゲゼル入門──減価する貨幣とは何か』(アルテ、2009)など。