書評/BOPを変革する情報通信技術 バングラデシュの挑戦
バングラの貧困層支援 グラミン銀と九大連携 研究機関設立へ覚書
2009年9月28日 00:24 カテゴリー:アジア・世界 九州 > 福岡
貧困層救済の研究組織設立に向けて覚書を結んだ(左から)NTTの篠原弘道取
締役、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏、九州大学の安浦寛人副学長 九
州大学は27日、貧困層救済のため独自の融資制度を築きノーベル平和賞を受け
たグラミン銀行グループ(バングラデシュ)と、提携研究機関の設立に向けた覚
書を締結した。
研究機関は、国際産学組織「グラミン・クリエイティブ・ラボ(GCL)@九 州大学」と「グラミン・テクノロジー・ラボ(GTL)」。GCLは利益を社会 問題の解決に使う「ソーシャル・ビジネス」に関する研究や教育、普及などを行 う。来年度中に活動を始める。GCLは数カ国の大学に設置されており、国内は 立教大学に続き2例目。
GTLは、発展途上国の実情に即した技術や製品の開発が狙い。同グループが 技術開発で企業や大学と連携するのは世界初で、発展途上国のニーズや実験の場 などを提供する。九大、同グループ、NTTの3者で具体的な検討に入り、本年 度中に参加企業などを募集、年度末までに設立のための契約を結ぶ予定。九大は 2007年に同グループの1社と学術交流協定を結び、同国向けのICカード式 電子通帳の研究を進めている。
福岡市で行われた締結式には、同行総裁でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ ユヌス氏が出席。「世界トップの日本の技術が、発展途上国の生活に変化をもた らすことを期待したい。日本の企業もそのために取り組んでほしい」と話した。
■「日本の技術で母国発展を」 電子通帳発案者のアハメッド九大准教授
九州大学がバングラデシュで普及を目指すICカード式電子通帳の実証試験 が、11月から首都ダッカで始まる。同国のグラミン銀行グループとの提携事 業。発案者は、同大学で情報技術の研究に携わるバングラデシュ人のアシル・ア ハメッドさん(39)。「日本で学んだ成果を生かし母国を豊かにしたい」と福 岡、ダッカを飛び回っている。
アハメッドさんは1988年、コンピューター技術を学ぶため来日。大分高専 や東北大学、通信会社などを経て、2年前から九大で開発途上国の社会情報基盤 構築の研究開発に取り組み、現在はシステム情報科学研究院特任准教授を務める。
電子通帳の事業は、同銀行が貧困層の自立支援のため無担保・低利で行う少額 融資制度と連携。入出金管理に九大独自のICカードを利用し、効率化や不正防 止に役立てる。同銀行傘下のグラミン・コミュニケーションズの一員でもあるア ハメッドさんが、九大伊都キャンパス(福岡市)で実用化された電子マネー機能 付きの学生証をヒントに考えた。同銀行総裁のムハマド・ユヌス氏も、取り組み を高く評価しているという。
母国は最貧国の一つに数えられる。学生時代から支援に熱心なアハメッドさん は、自分の奨学金の一部を幼少期を過ごしたエクラシュプール村に送り、子ども たちの教育を支えた。情報格差を埋めようと奨学金を元手に日本人の知人と基金 を設け、同村の小学校など16カ所で新聞を購読させた。その輪が約250カ所 に広がり、半数が自費購入する現状を「人々が情報に関心を持つようになった」 と喜ぶ。
20日にはアハメッドさんらの編著で、九大の取り組みを紹介する「BOPを 変革する情報通信技術−バングラデシュの挑戦」(集広舎、1890円)を出版 した。「情報技術は途上国の暮らしを豊かにする」。そう確信し、アハメッドさ んは母国での実証試験に臨む。
=2009/09/28付 西日本新聞朝刊=


















