BOPを変革する情報通信技術BOPを変革する情報通信技術 バングラデシュの挑戦
著者:アシル・アハメッド
編著:大杉卓三
序文:グラミン銀行 総裁ムハマド・ユヌス
発行:2009年9月20日

アマゾンで購入

 
 電気が通じていない農村で携帯電話を使う村人、電話線が整備されていない町で運営されるインターネットカフェ。開発途上国において、情報通信技術(ICT)が農村部でも人々の身近に存在する風景は、ありふれたものになろうとしている。

 本書の舞台であるバングラデシュをはじめとする開発途上国ではBOP(Base of the Pyramid:所得ピラミッドの底辺層)と呼ばれる貧困層が人口の多くの割合を占める。世界で40億人以上といわれるBOPを巨大なマーケットとして再定義し、持続的なビジネスを通して貧困削減に取り組む戦略が注目を集めている。BOPマーケットでは、社会的利益を最優先させ、BOPの人々が自ら取り組む「ソーシャル・ビジネス」が重要であり、そこにICTは不可欠なツールとなっている。ICTを活用することで人々は適切な情報を入手し、またコミュニケーションは人々の連帯を実現する。その結果、自らの能力に自信を持ち、単なる巨大マーケットの消費者ではなく新たな富を創造する生産者ともなりうる。本書は九州大学とグラミン・コミュニケーションズの共同研究の成果に基づき、バングラデシュにおいてICTが導く社会経済の変革について具体的事例を綴ることで、そこに暮らすBOPの人々の姿を明らかにする。

 ノーベル平和賞受賞者、福岡アジア文化賞受賞者のグラミン銀行総裁ムハマド・ユヌス氏が特別に本書に寄せた序文には、「情報通信技術(ICT)は、貧困削減など多くの社会的な問題を解決する上で重要な役割を持つ。グラミンのビレッジ・フォン・レディと呼ばれる女性たちは、ICTが貧しさから人々を引きあげ、彼らを取り巻く世界に貢献する本物のビジネスチャンスを作り出すことを証明した。……今では2千を超えるテレセンターがグラミンなどの組織によって運営され、農村ではICTが日常生活の一部になっている。バングラデシュではすべての地域に携帯電話のネットワークが張り巡らされており、加入者数は4千800万人に達している。この携帯電話というインフラストラクチャーを使って開始された有料のアドバイスサービスは、僻地に住む患者と医師、農民と農業専門家、売り手と買い手の間にあった距離と時間を縮めた。携帯電話を使えば、いつでも、どこでも、医師や農業専門家のアドバイスを受けることができる。……本書には、九州大学の研究グループがバングラデシュの現地調査で得た経験が収められている。この本によって、学生たちが社会問題の解決に向かい、研究者たちが新たな試みの種を発見し、高度な技術を持つ日本の企業がソーシャル・ビジネスへの関与を拡大していく ことを希望する。私たちが共に働くことができるなら、『貧困を博物館に』という構想は現実味を帯びてくるだろう」と本書の意義を述べている。