▲艾未未『老媽蹄花 – ラオマァティホア』日本語字幕

小社刊『艾未未読本』の編著者・牧陽一氏のご協力で、艾未未の映像作品(日本語字幕版)を数回にわたって紹介します。第2弾は『老媽蹄花 – ラオマァティホア』(成都名物料理「豚足煮込み」のこと。成都警察殴打艾未未事件を意味する)です。

 

老媽蹄花(ラオマァティホア)

 二〇一三年六月二十二日に「傻伯夷」以外の「老妈蹄花(成都警察殴打艾未未事件)」「不就翻个墙吗(グレート・ファイアウォールを突破しろ)」「朝阳公园(朝陽公園)」「美国旅馆(ホテルアメリカ)」「明天还给我(明日を返せ)」合計六曲がサウンド・クラウドに公表された。
 四川汶川大地震の調査を進めていた譚作人が国家政権転覆扇動罪にとわれた。艾未未は譚作人弁護のために成都に向かうが、二〇〇九年八月十二日深夜、成都市安逸一五八旅館で警察に襲撃され、右頭部を殴打される。九月十五日内出血が確認され、ミュンヘンの病院で手術を受ける。

 私が負傷したのはさっきのビデオで出てきた譚作人裁判と関係がある。彼は環境保護主義者で、同様に5・12四川汶川大地震学生犠牲者名簿に関心があって、彼がやったのも「公民調査」と呼ばれる。彼は私たちの前に在る人だが、面識がなく、以前は彼の事を知らなかった。当然彼は当地の政府に国家政権転覆扇動罪と起訴され、一審では懲役五年の判決を受けた。彼の弁護士の浦志強が私に言った「艾未未よ、あなたがやっていることは彼に似ている、彼の裁判で証言するか」私は言った、「もちろん証言に立ちたい。彼を裁くのなら私をも裁くべきだろう。私が彼のために証言しないなら、誰も私のために証言してはくれない」
 私が四川へ行くとその日の夜一台の車が私たちの旅館の下に止まっていた。それは「国宝(国宝は国保と同音、国保とは「公安部国内安全保衛局」)」だった。私が彼らにとった態度はというと、直接その車に行って、私を探しているのかと訊いたのだが、その時彼らは驚いてすぐさま、車を走らせていってしまった。だから話せば実に可笑しいことだが、何事によらず、秘密裏にあなたを追跡している人がいて、その人にあなたが直接あなた方は私を探しているのかという。彼らの誰もが人に決して看破られたくないから、当然日頃誰もこんなことを訊いてはこない、だからいつも彼らはうまくいっているような気になっているのだ。
 そして寝付いて三時間ぐらい経った夜中の3時、私たちのビル全体がハリウッド映画みたいなことになった。すべてのドアが蹴破られた、ドア一枚全部破られたのもある。私は先ず110番に電話した。誰かが私たちの泊っている旅館に闖入してきたと。そして私はドアの向こうの人間に誰だと訊いた、彼らは警察だという、私は自分たちが警察だとどう証明できるのか訊いた、彼はドアビュアーから見てみろという、私はなぜ見なければいけないのかといった、すると彼らは腹を立ててドアを蹴破って私を殴った。その時私はまともだったと思う、なぜなら警察はどのみち人を使って殴らせる、私だって初めての事ではなかった、だが頭はずっと痛かった。
 一カ月後、私がドイツへ行って美術展を開催した時、博物館の館長がかなり心配性の人で、絶対に病院へ行けという。病院へ行くと医者はすぐに入院しろという。その医者は最も優れた脳外科医でミュンヘン大学の脳外科専門だった。彼はその時こんなに酷い大脳内出血は四年に一度やっと出会うぐらいのものだ、と言ったのだが、私はその時にはもう感覚がなかった。当時幸いにも入院できて、今こうしてここに立って皆とおしゃべりすることができる。(『艾未未読本』118,119ページ)

 ここでは二〇〇九年八月十二日深夜、安逸一五八旅館でおきた成都警察による艾未未襲撃事件を再現する。獄中の様を再現した先のジオラマ作品や「傻伯夷シャーボーイー」同様に再現することで政府の暴力を公衆の面前に曝し出し、権力を逆転させる。

牧 陽一

第1回/アイ・ウェイウェイ映像作品「傻伯夷」
第3回/アイ・ウェイウェイ映像作品「朝陽公園」
第4回/アイ・ウェイウェイ映像作品「明日を返せ」

◎参考:映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』公式サイト(2013年11月30日公開)
◎参考:ARTiT 連載/艾未未のことば – 牧陽一